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イボイモリは飼育できる?|国の希少種で捕獲・売買は禁止

イボイモリは飼育できる?|国の希少種で捕獲・売買は禁止

イボイモリ(学名 Echinotriton andersoni)は、国の「国内希少野生動植物種」に指定されているため、捕まえる・買う・もらう・売るといった行為が原則として禁止されています(環境省・種の保存法)。奄美大島・徳之島・沖縄島などにだけ住む日本の固有種で、鹿児島県と沖縄県の天然記念物でもあります。つまり、国内のイボイモリを新しく手に入れて飼う方法は、許可を受けた研究や保護などの例外を除いてありません。

一方、ペットショップや通販で見かける「ミナミイボイモリ」「アメイロイボイモリ」は、中国や東南アジアなどに住む別の属(Tylototriton)のイモリの流通名です。名前に「イボイモリ」と付いていても、国内のイボイモリとはかかる決まりが違います。この記事では、国内のイボイモリにかかる3つの決まり(種の保存法・県の天然記念物・ワシントン条約)と、外国産との違いを整理します。

こけの付いた石の上を歩く黒いイボイモリ。体の横にいぼのような突起が並び、指先がオレンジ色
イボイモリ(Echinotriton andersoni)。写真: Neil Dalphin(Wikimedia Commons)・CC0・改変あり(リサイズ)

この記事の根拠:環境省の「国内希少野生動植物種一覧」と種の保存法の規制資料、環境省の第5次レッドデータブック(2026年3月公表)とレッドリスト2020、鹿児島県教育委員会(県立博物館)の天然記念物の解説、沖縄県の天然記念物の案内、鹿児島県天城町の文化遺産データベース、ワシントン条約附属書Ⅲへの掲載に関する環境省の発表、学術論文と地元紙の報道を整理したものです(2026年10月25日に確認)。法律の解釈を示すものではないため、個別のケースは環境省の地方環境事務所や県の教育委員会に確認してください。飼育や採集の体験は含みません。

目次

【結論】イボイモリにかかる3つの決まり早見表

決まりいつから主に禁止・必要になること窓口・根拠
種の保存法(国内希少野生動植物種)2016年(平成28年)3月施行捕獲・採取・殺傷、譲渡し等(あげる・売る・貸す・もらう・買う・借りる)、販売目的の陳列・広告、輸出入が原則禁止。卵も対象の種環境省(地方環境事務所)。例外は環境大臣の許可
県の天然記念物鹿児島県は2003年(平成15年)4月22日指定。沖縄県も県指定捕獲や移動などの「現状変更」に許可が必要鹿児島県・沖縄県の教育委員会(文化財保護条例)
ワシントン条約 附属書Ⅲ2021年2月14日発効(日本が掲載を要請)海外どうしの取引でも、原産地証明書など条約の書類が必要環境省・経済産業省
表1 イボイモリにかかる決まり(環境省 国内希少野生動植物種一覧・環境省 規制の概要(PDF)・鹿児島県教育委員会・沖縄県・環境省 2021年2月15日発表を整理。2026年10月25日確認)
イボイモリにかかる種の保存法・県の天然記念物・ワシントン条約附属書Ⅲの3つの決まりと、外国産のTylototriton属との違いの図
図 イボイモリにかかる3つの決まりと、外国産「イボイモリ」との違い(いきものばかり作成)

イボイモリとは|2022年にオキナワとアマミの2種に分かれた

イボイモリは琉球列島の中部にだけ住むイモリ科の両生類です。鹿児島県立博物館の解説は、イモリ科の中で「最も原始的な形態をとどめている」といわれる種で、ほぼ全身が黒褐色、総排出肛・足の裏・尾の下面・肋骨の先端がオレンジ色になると説明しています。体の横に並ぶいぼのような突起は、肋骨が変化したものです(天城町 文化遺産データベース)。

以前は1種とされていましたが、天城町の文化遺産データベースによると、2022年(令和4年)11月に日本爬虫両棲類学会で、奄美群島の個体が「アマミイボイモリ」として別の種に分けられ、沖縄島周辺の個体群は「オキナワイボイモリ」になりました。環境省の国内希少野生動植物種一覧にも、指定後に2種に分かれた Echinotriton andersoni(オキナワイボイモリ)と Echinotriton raffaellii(アマミイボイモリ)をどちらも含むと注記されています。環境省の第5次レッドデータブック(2026年3月)も、両者の遺伝的・形態的な違いが大きいことを根拠に、2022年に鹿児島県の個体群が別種アマミイボイモリとして分けられたと説明しています。分類が変わって間もないため、自治体の資料や法令では、分ける前の「イボイモリ」として扱われている場合があるとも注意しています。

オキナワイボイモリアマミイボイモリ
学名Echinotriton andersoniEchinotriton raffaellii
住んでいる島沖縄島・瀬底島・渡嘉敷島奄美大島・請島・徳之島
大きさ全長120〜210mm(頭胴長57〜94mm)全長110〜160mm(頭胴長55〜82mm)
産卵2〜5月に水際の陸上2〜4月に水際の陸上
環境省 第5次レッドリスト(2026年)絶滅危惧ⅠB類(EN)絶滅危惧Ⅱ類(VU)
県のレッドリスト沖縄県 絶滅危惧Ⅱ類鹿児島県 絶滅危惧Ⅰ類
種の保存法どちらも国内希少野生動植物種(2016年3月の「イボイモリ」の指定に含まれる)
天然記念物沖縄県指定鹿児島県指定(2003年4月22日・地域を定めず)
表2 国内の2種の違い(環境省 第5次レッドデータブック オキナワイボイモリ・アマミイボイモリ〔富永・松井 2026・CC BY 4.0〕・環境省 国内希少野生動植物種一覧・鹿児島県教育委員会を整理。2026年10月25日確認)

暮らし方も、水辺で見かけることの多いアカハライモリやシリケンイモリとは違います。琉球新報の記事は、イボイモリは大人になると陸上で生活し、水中で暮らすのは幼生のときだけと紹介しています。天城町のデータベースによると、夜行性で動きはとてもゆっくりで、ミミズ・ナメクジ・カタツムリなど素早くない動物を食べ、最大まで成長するには10年以上かかるとされています。第5次レッドデータブックも、卵は水際の陸上に産み、孵化した幼生が雨のときなどに自力で水場へたどり着くこと、精包の受け渡しも陸上で行われることを書いています。

絶滅のおそれも高まっています。2026年3月の環境省の第5次レッドリストでは、2種に分けて評価され、オキナワイボイモリは絶滅危惧ⅠB類(EN)、アマミイボイモリは絶滅危惧Ⅱ類(VU)になりました(分ける前のイボイモリは、レッドリスト2020まで絶滅危惧Ⅱ類)。第5次レッドデータブックは、存続を脅かす大きな要因として、宅地開発・道路整備・ダムや河川改修・森林伐採による生息環境の悪化と、道路での轢死を挙げています。

種の保存法|捕獲・譲渡し・陳列が原則禁止

イボイモリは、2016年(平成28年)3月に種の保存法の「国内希少野生動植物種」になりました(環境省 国内希少野生動植物種一覧)。2025年2月時点で国内希少野生動植物種は458種、そのうち両生類は41種です。

環境省の資料では、国内希少野生動植物種について次のことが原則として禁止されています。

  • 捕獲等(捕獲・採取・殺傷・損傷)(法第9条)
  • 譲渡し等(あげる・売る・貸す・もらう・買う・借りる)(法第12条)
  • 販売・頒布目的の陳列と広告(法第17条)
  • 輸出入

陳列や譲渡し等の禁止の対象は「個体(生死は問わない。一部の卵・種子を含む)・器官・加工品」です。環境省のパンフレットでは、イボイモリは卵の採取・譲渡し等も規制されている種(☆印)に入っています。死んだ個体や卵でも対象になるということです。違反した場合は、5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金、またはその両方(法人は1億円以下の罰金)です。環境省の資料では「懲役」と書かれていますが、2025年6月1日に改正刑法が施行され、懲役と禁錮は「拘禁刑」にまとめられました。

なお、国内希少野生動植物種の中には、商業的な繁殖ができる種として届け出れば売買の事業ができる「特定第一種」や、販売目的の捕獲・譲渡しだけを規制する「特定第二種」があります。イボイモリはどちらにも指定されていません(環境省 国内希少野生動植物種一覧)。そのため、「繁殖個体なら売ってよい」「趣味で1匹だけなら捕まえてよい」という扱いにはなりません。天城町のデータベースも、捕獲・販売・譲渡などをする場合は環境大臣の許可が必要と書いています。

ネットオークションに出品して摘発された例

実際に摘発された例もあります。琉球新報(2022年6月13日)によると、沖縄県内でイボイモリを採取し、「海外に生息する別品種」としてネットオークションに出品した20代の男性が、種の保存法違反(販売目的広告の禁止)の容疑で県警に摘発されました。閲覧者から「イボイモリではないか」と指摘されて出品は取り下げられていたものの、広告そのものが違反の対象になった例です。同じ記事は、県警が種の保存法違反でイボイモリやウミガメなどを取引したとして、それまでに8件・10人を摘発していると伝えています。

県の天然記念物|鹿児島県と沖縄県

国の法律とは別に、イボイモリは鹿児島県と沖縄県の天然記念物です(天城町 文化遺産データベース・Nature of Kagoshima 36巻)。鹿児島県教育委員会の解説では、指定年月日は2003年(平成15年)4月22日、所在地は「地域を定めず指定(奄美大島,徳之島)」です。場所を限らない指定なので、島のどこにいる個体も対象です。同じ解説は、生息環境の悪化とともに売買目的の捕獲などによって急速に個体数が減少し、絶滅が心配されていると書いています。

沖縄県は、天然記念物は文化財保護法と沖縄県文化財保護条例で指定されており、捕獲や移動などの現状変更をするときは文化庁長官または沖縄県教育委員会の許可が必要と案内しています。環境省の第5次レッドデータブックも、オキナワイボイモリについて「沖縄県の天然記念物に指定されている」と書いています。沖縄県での指定の年月日は、今回確認した県の公開資料では見つかりませんでした(資料なし)。

ワシントン条約 附属書Ⅲ|海外での売買にも網をかけた

種の保存法で日本からの持ち出しは規制されていても、すでに海外に出てしまった個体の取引は、日本の法律では止められません。環境省は2020年7月の意見募集で、トカゲモドキ属とイボイモリの仲間は海外でペットとしての需要があり、国内の7種(トカゲモドキ属6種とイボイモリ1種)について海外で商業目的の取引が確認されていると説明しています。

そこで日本政府は2020年11月に条約事務局へ掲載を要請し、イボイモリは2021年2月14日からワシントン条約の附属書Ⅲに載りました(環境省 2021年2月15日発表)。附属書Ⅲに載った種は、指定国(日本)以外から輸出するときにも原産地証明書が必要になります。環境省は、日本から密輸された個体が国際市場に流れにくくなり、国内での違法な捕獲を防ぐ効果を見込んでいます。対象は生きた個体だけでなく、卵も含みます(部分・派生物は卵以外を除く、という注釈つき)。

海外に持ち出された例もあります。WWFジャパンのスタッフブログによると、2015年11月に、日本から違法に持ち出されたイボイモリがベルギーの税関で差し止められ、その後日本に戻されました。

「ミナミイボイモリ」「アメイロイボイモリ」は別の属

ペットとして売られている「ミナミイボイモリ」「アメイロイボイモリ」などは、国内のイボイモリ(Echinotriton 属)とは別の Tylototriton 属のイモリにつけられた流通名です。英語では「クロコダイルニュート」と呼ばれる仲間で、2023年の学術論文(ZooKeys 1168)によると、アジアのモンスーン気候の地域の山地の森に38種が知られています。和名と学名の対応は店や資料で異なることがあり、公的な対応表は見つかりませんでした(資料なし)。

国内のイボイモリ外国産の「イボイモリ」
属Echinotriton(オキナワ・アマミの2種)Tylototriton(38種)
住んでいる場所奄美群島・沖縄諸島だけヒマラヤ東部・中国中南部からミャンマー・ラオス・タイ・ベトナムまでのアジアの山地
種の保存法国内希少野生動植物種(売買・譲渡しが原則禁止)国内希少野生動植物種には含まれない(国内に住んでいない種)
ワシントン条約附属書Ⅲ(2021年2月〜)属の全種が附属書に掲載(ZooKeys 2023)
店で買えるか買えない(売ること・広告することが違反)条約の手続きを経て輸入された個体などが流通
表3 国内のイボイモリと外国産の違い(環境省・環境省 2021年発表・ZooKeys 1168(2023)を整理)

ワシントン条約では、附属書Ⅰの種は種の保存法で国内の譲渡し等も規制されますが、附属書Ⅱ・Ⅲの種は、輸出国政府の輸出許可書(附属書Ⅲは指定国以外なら原産地証明)があれば商業目的の国際取引ができます(環境省「ワシントン条約の概要」)。外国産のイモリを買うときは、学名と、正規に輸入・繁殖された個体であることを店に確認するのが確実です。前の節の摘発例のように、国内のイボイモリを「海外の品種」と偽って売ろうとした例もあるためです。

野外で見つけたら|触らず、その場に

琉球新報の記事は、山中などでイボイモリを見つけても、国内希少野生動植物種と沖縄県指定の天然記念物であるため触れたり捕獲したりすることはできないと書いています。写真を撮って観察するだけにとどめ、持ち帰らないことが基本です。

沖縄県は、海や山で違法な捕獲をしている人を見かけたら110番通報するよう呼びかけています。また、夜に道路を歩いているイボイモリは車にひかれやすく、徳之島の調査報告(Nature of Kagoshima 36巻)は、生息地の道路でロード・キル(車にはねられる事故)が頻発していると報告しています。第5次レッドデータブックも、沖縄島中北部や徳之島では繁殖期に多くの個体が轢死していると書いています。奄美や沖縄の森の近くを夜に運転するときは、路上の小さな生き物に気をつけてください。

資料による食い違い|大きさ・産卵・区分

大きさや産卵の書き方は資料によって違います。測る場所(頭胴長か、尾まで含む全長か)や産地、2種に分ける前の資料かどうかが違うためと考えられますが、測り方を明記していない資料もあります。この記事の表2は、2種を分けて書いている環境省の第5次レッドデータブックに合わせました。

項目資料書かれている内容
大きさ環境省 第5次レッドデータブックオキナワ 全長120〜210mm・頭胴長57〜94mm/アマミ 全長110〜160mm・頭胴長55〜82mm
鹿児島県教育委員会胴体部分の長さが7〜10cm
天城町 文化遺産データベース(アマミ)10〜15cmくらい。徳之島産は他の産地に比べ小柄
琉球新報 2023年(オキナワ)成体14〜20cm
産卵環境省 第5次レッドデータブックオキナワ 2〜5月・アマミ 2〜4月に、水際の陸上に産卵
天城町 文化遺産データベース徳之島では1〜2月に繁殖行動が多く、水流の無い水辺で産卵。オキナワイボイモリの産卵は、やや流れのある河川域で行われるという
絶滅のおそれ環境省レッドリスト2020(2種に分ける前)イボイモリ 絶滅危惧Ⅱ類(VU)
環境省 第5次レッドリスト(2026年)オキナワ 絶滅危惧ⅠB類(EN)/アマミ 絶滅危惧Ⅱ類(VU)
Nature of Kagoshima 36巻鹿児島県のカテゴリーでは絶滅危惧Ⅰ類
分布の島鹿児島県教育委員会奄美大島・徳之島・沖縄島・渡嘉敷島
環境省 第5次レッドデータブックオキナワ 沖縄島・瀬底島・渡嘉敷島/アマミ 奄美大島・請島・徳之島
表4 資料による違い(環境省 第5次レッドリスト(爬虫類・両生類・PDF)・環境省レッドリスト2020(PDF)ほか本文の資料。2026年10月25日確認)

オスとメスの違いについて、天城町のデータベースは「メスがやや大きい程度で、外見では判別はできない」としています。

よくある質問

Q. イボイモリは飼育できますか?

A. 国内のイボイモリ(オキナワイボイモリ・アマミイボイモリ)は、種の保存法で捕獲・譲渡し等(買う・もらうを含む)が原則禁止されているため、許可を受けた場合を除いて新しく手に入れて飼う方法はありません。店で売られている「ミナミイボイモリ」などは外国産の別の属です。

Q. 死んだイボイモリや卵なら拾ってもよいですか?

A. 環境省の資料では、規制の対象は「個体(生死は問わない。一部の卵・種子を含む)」で、イボイモリは卵の採取・譲渡し等も規制される種です。死体や卵も持ち帰らないでください。

Q. ミナミイボイモリを飼うのは違法ですか?

A. 外国産の Tylototriton 属は国内希少野生動植物種ではなく、ワシントン条約の手続きを経て正規に輸入された個体などは流通しています。購入時は学名と入手の経緯を店に確認してください。

Q. 庭や道路でイボイモリを見つけたら?

A. 触ったり捕まえたりせず、その場で観察するだけにします。違法な捕獲を見かけたときは、沖縄県は110番通報を呼びかけています。

関連記事:シリケンイモリの飼い方/シリケンイモリの寿命・毒・値段(販売自粛の現状)/シリケンイモリとアカハライモリの違い/アカハライモリの採集は禁止?/アカハライモリは絶滅危惧種?

参考資料

確認日:2026年10月25日。法令や指定は変わることがあります。最新の内容は各資料の公式ページで確認してください。

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