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シリケンイモリの繁殖・卵・幼生|オキナワとアマミの違い

シリケンイモリの繁殖・卵・幼生

この記事は「シリケンイモリの飼い方」シリーズの3本目/3本です。

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シリケンイモリの繁殖期は、環境省のレッドデータブックではおもに11〜6月と、アカハライモリ(産卵は4〜6月が中心)より冬に寄っています。卵は水中の水草などに1粒ずつ産みますが、水辺の湿ったコケなど陸上に産むこともあります。20℃一定で育てた研究では、孵化まで21〜37日、上陸まで106〜136日と、同じ条件のアカハライモリより長くかかりました。

この記事は、シリケンイモリの繁殖・卵・幼生について、公開されている資料だけを整理したものです。数値には出典をつけ、資料が見つからなかった項目は「資料なし」と書いています。

落ち葉の上を歩くオキナワシリケンイモリ(Cynops ensicauda popei)。黒褐色の体に橙色の線があり、お腹の縁と指先が橙色
オキナワシリケンイモリ(沖縄島北部の道ばたで撮影された野生個体) 写真: Simon Speich(Wikimedia Commons)・CC BY-SA 4.0・改変あり(リサイズ)

この記事の根拠:環境省(第5次レッドデータブック・奄美野生生物保護センターのパンフレット)、沖縄県・鹿児島県・奄美市の公式ページ、繁殖・発生・食性の学術論文、学会の講演要旨を整理したものです(2026年10月9日時点で確認)。繁殖の実体験を記したものではありません。

目次

【結論】シリケンイモリの繁殖・卵・幼生の早見表

知りたいこと資料から言えること出典
繁殖期おもに11〜6月(環境省)、おもに12〜5月(沖縄県)。冬〜春が中心で、資料により幅がある環境省 第5次RDB/沖縄県RDB
卵の産み方水中の水草などに1粒ずつ。湿ったコケなど陸上に産むこともある環境省(オキナワ)/沖縄県RDB
卵の大きさ直径2.5〜2.6mm(研究で使った卵)。同じ論文のアカハライモリは2.0〜2.1mm宇都宮・宇都宮 1977
卵の数飼育下のメス1匹が12〜1月に70個を産んだ記録が1件。野外での1匹あたりの数は資料なしShiroma ほか 2023
孵化まで20℃一定で21〜37日(アカハライモリは17〜27日)宇都宮・宇都宮 1977
上陸まで20℃一定で106〜136日。環境省は「ふ化後3〜4ヶ月で変態・上陸」宇都宮・宇都宮 1977/環境省
採集した個体を殖やしてよいか国・沖縄県・鹿児島県・奄美市の指定種にはなっていない。ほかの市町村の条例や採集場所の規制は自分で確認が必要環境省/各自治体(表6)
表1 シリケンイモリの繁殖・卵・幼生の早見表(2026年10月9日確認)

飼育環境はシリケンイモリの飼い方、オスとメスの見分け方はシリケンイモリとアカハライモリの違いにまとめています。

シリケンイモリの繁殖期はいつ?資料ごとに比べる

繁殖期は資料によって書き方が違います。並べると「冬から春」が共通し、地域によっては夏〜秋にも繁殖が記録されています。

資料対象時期の記載
環境省 第5次レッドデータブック(2026)オキナワ・アマミ繁殖は「おもに11〜6月」。オキナワは「地域によっては、繁殖期が9月までに及ぶことがある」
沖縄県 レッドデータおきなわ第3版(2017)亜種に分ける前の扱い「おもに12月〜5月」。「一部の地域では夏から秋の繁殖も確認されている」
大久保(2025)日本生態学会の講演要旨亜種の記載なし求愛行動と産卵期が「ほぼ重なり12月〜3月」
Katayama(2011)Herpetological Journalオキナワ(野外)1月23日と2月18〜19日の採集を「産卵期にあたる」と記載
Shiroma ほか(2023)Current Herpetologyオキナワ(飼育下)11月に同居させたメスが12月〜翌1月に産卵
Sparreboom・Ota(1995)Herpetological Journalオキナワ(野外)古い文献の記載として「3月から6月か7月、最盛期は4月」。4月の調査時も産卵中
表2 シリケンイモリの繁殖期を資料ごとに比較(2026年10月9日確認)
シリケンイモリの繁殖の図解。上段は資料ごとの繁殖期のカレンダーで、環境省は11月から6月(オキナワは地域により9月まで)、沖縄県は12月から5月、学会の講演要旨は12月から3月、野外の調査は1月下旬と2月中旬、飼育下の記録は12月から1月に産卵70個で5月中旬から6月に変態60匹、1995年の論文が引く古い報告は3月から6月か7月。下段は20℃一定での日数で、シリケンイモリは孵化21から37日・上陸106から136日、アカハライモリは孵化17から27日・上陸82から109日
図 シリケンイモリの繁殖|資料ごとの繁殖期と、20℃での孵化・上陸までの日数(出典: 環境省 第5次RDB、沖縄県RDB、大久保 2025、Katayama 2011、Shiroma ほか 2023、Sparreboom・Ota 1995、宇都宮・宇都宮 1977。いきものばかり作成)

アカハライモリと時期がずれる

アカハライモリは秋と春に求愛し、野外の産卵は4〜6月が中心です(アカハライモリの卵)。上の講演要旨は、アカハライモリでは求愛と産卵の時期がずれるのに対し、シリケンイモリでは重なると報告しています。同じ要旨は、2種とも繁殖期の気温は10〜25℃で、気温が繁殖行動の引き金になっている可能性を挙げています(高校生によるポスター発表の要旨で、論文ではありません)。

飼育下では、冬も20℃より暖かい室内で産卵した記録があります(Shiroma ほか 2023・1例)。アカハライモリの繁殖で行う冬の低温(アカハライモリの繁殖方法)がシリケンイモリにも必要かを調べた資料は、確認できませんでした。

産卵と卵|水草に1粒ずつ、陸上に産むこともある

環境省はオキナワシリケンイモリについて、メスが「後肢を用いて水中の水草などに一つずつ卵を包み込むようにして産卵する」「時には陸上でも産卵する」と書いています。沖縄県のレッドデータブックは、産卵場所を水中の水草、水ぎわの落ち葉、さらに「水面から1m近く上方の土手に生育する湿ったスギゴケ等」まで挙げています。

一方、野外で産卵を観察した Sparreboom・Ota(1995)は、メスは葉で卵を包むのではなく、後ろ足で葉や小枝を卵に押し当てるだけだったと書いています。卵の多くは水に沈んだ枯れ草の茎の中や、水ぎわの草の間に隠れていました。「包む」かどうかは資料で表現が分かれるため、本記事ではどちらも併記します。アマミシリケンイモリの環境省の解説には、産卵場所の記載がありません。

卵の数を示した資料は1件だけでした。飼育下のメス1匹がオオカナダモに産んだ卵は、2020年12月〜2021年1月で70個でした(Shiroma ほか 2023)。野外での1匹あたりの産卵数は資料なしです。

親が卵を食べる|野外の胃の中身で確認

沖縄島の3か所で産卵期のオキナワシリケンイモリ83匹の胃の中身を調べた研究では、重さで見た餌の42〜75%が同じ種の卵でした。卵はおもにメスの胃から見つかり、オスからはまれでした(Katayama 2011)。1995年の論文でも、目立つ場所の卵を大人が食べる様子が観察されています。Shiroma ほか(2023)は、産卵が始まった12月にオスとメスを分けています。卵を育てるなら、アカハライモリと同じく親と分けるのが前提です。

孵化から上陸まで|アカハライモリより長くかかる

シリケンイモリとアカハライモリを同じ20℃で育てて比べた研究があります。宇都宮・宇都宮(1977)は、奄美大島産のシリケンイモリと広島県産のアカハライモリの卵を人工授精し、20℃の恒温槽で発生の日数を記録しました。

段階シリケンイモリアカハライモリ(同じ条件)出典・条件
卵の直径2.5〜2.6mm2.0〜2.1mm宇都宮・宇都宮 1977(観察に使った卵)
孵化21〜37日17〜27日同上(20℃・人工授精から)
上陸106〜136日82〜109日同上
孵化した割合70個中65個(92.9%)—Shiroma ほか 2023(オキナワ・飼育下1例)
変態した数と時期60匹(85.7%)が2021年5月中旬〜6月に変態—同上
変態・上陸まで(野外)ふ化後3〜4か月—環境省 第5次RDB(2亜種とも)
野外の幼生の大きさ全長13mm(卵黄が残る)〜47mm(変態間近)—Sparreboom・Ota 1995(オキナワ・4月)
成熟まで数年を要すると思われる—環境省/沖縄県RDB
表3 卵から上陸までの資料値(2026年10月9日確認)

範囲の端どうしで比べると、シリケンイモリは孵化で4〜10日、上陸で24〜27日長くかかっています。同じ論文では、幼生の時期の全長はシリケンイモリが比べた3種の中で最も小さく、変態が近づくと差はほとんどなくなったとされています。ただし20℃以外の水温で何日かかるかを示した資料は確認できませんでした。孵化した幼生の色は、沖縄県のレッドデータブックでは「全身がほぼ一様に黒色」です。

幼生の管理|アカハライモリとの違いだけ確認する

卵や幼生の扱いの基本(育てる数を先に決める、親と分ける、育たない卵を取り除く、水換え)は、アカハライモリの卵|産卵時期・数・無精卵の見分けと管理とアカハライモリの幼生の育て方にまとめています。ここでは、資料からシリケンイモリで変わると言える点だけを挙げます。

項目アカハライモリの記事での扱いシリケンイモリで変わる点根拠
卵を探す場所水草の折りたたまれた葉を光に透かす水中に加え、水ぎわの落ち葉や陸地の湿ったコケも見る環境省(オキナワ)/沖縄県RDB
産卵の時期4〜6月が中心冬〜春(おもに11〜6月)。冬に卵が見つかることを前提にする表2
孵化までの見込み12日〜3週間前後20℃で21〜37日。アカハライモリの日数を過ぎても、日数だけで育たない卵とは判断しない宇都宮・宇都宮 1977
幼生の期間孵化から上陸まで50日〜3か月ほど20℃で上陸まで106〜136日。餌と水換えを続ける期間を長めに見込む宇都宮・宇都宮 1977/環境省
親と卵を分ける親が卵を食べるので分ける同じ。野外でも産卵期の餌の重さの42〜75%が同種の卵Katayama 2011
幼生の餌ブラインシュリンプ→冷凍アカムシ研究室ではイトミミズとミジンコを与えた記録がある。種に合わせた餌を比べた資料はなし宇都宮・宇都宮 1977
水温極端な高温を避ける冬も20℃超・夏約23〜28℃の室内で繁殖・変態した記録が1例。幼生の適温を示した資料はなしShiroma ほか 2023
表4 幼生・卵の管理でアカハライモリと変わる点(2026年10月9日確認)

上陸が近づいたら水位を下げて足場を作る、という流れはアカハライモリと同じです。上陸した子は、もともと繁殖期以外は陸で暮らす生き物なので、成体と同じく陸地中心の環境に移していきます(シリケンイモリの飼い方)。

オキナワとアマミの違い|繁殖に関わるところ

環境省は、2つの亜種を「遺伝的にも形態的にも大きく分化している」と説明しています。繁殖に関わる項目を並べると、資料がそろっているのはオキナワのほうで、アマミは記載のない項目が多くなります。

項目オキナワシリケンイモリアマミシリケンイモリ出典
繁殖期おもに11〜6月。地域により9月までおもに11〜6月環境省 第5次RDB
産卵場所の記載水中の水草など。時には陸上記載なし環境省 第5次RDB
オスの婚姻色繁殖期でも白色の婚姻色は現れない記載なし環境省 第5次RDB
オスの腹部の腺で見つかった、メスを引き寄せるフェロモン(の候補)カウダリン・シレフリンカウダリン・ソデフリンNakada ほか 2025
アカハライモリのメスのフェロモン(イモリン)オスは引き寄せられなかったオスが引き寄せられたNakada ほか 2025
卵・発生の数値がある資料飼育下の産卵・孵化・変態の記録(Shiroma ほか 2023)20℃での発生日数(宇都宮・宇都宮 1977)表3
環境省レッドリスト絶滅危惧ⅠB類(EN)準絶滅危惧(NT)環境省 第5次RDB
表5 繁殖に関わるオキナワとアマミの違い(2026年10月9日確認)

2つの亜種を混ぜて殖やさない

オキナワとアマミを交配させた結果を示した資料は、確認できませんでした。上のように求愛に使うフェロモンの組み合わせまで違うことが報告されています。表3の発生の日数も、アマミ産の卵で測ったものと、オキナワの飼育記録とで出どころが違うため、亜種をまたいで当てはめるときは目安と考えてください。迎えた個体の亜種と産地は、シリケンイモリの寿命・毒・値段の確認点で整理しています。

採集した個体の繁殖は法令・条例を先に確認

シリケンイモリは国の国内希少野生動植物種に指定されておらず、環境省のレッドデータブックでも「保護に係る法令指定」は2亜種とも「指定なし」です。ただし、採集と繁殖の扱いは地域の条例や採集場所によって変わります。2026年10月9日に公式ページで確認できた範囲を並べます。

確認先シリケンイモリの扱い確認した資料
国(種の保存法)国内希少野生動植物種に指定なし環境省 国内希少野生動植物種一覧
沖縄県希少野生動植物保護条例指定なし(指定種47種に両生類はない)沖縄県「指定希少野生動植物種」一覧(令和4年12月20日指定分)
鹿児島県希少野生動植物の保護に関する条例指定なし(動物20種のうち両生類はベッコウサンショウウオのみ)鹿児島県「指定希少野生動植物について」
奄美市希少野生動植物の保護に関する条例指定なし(両生類はアマミハナサキガエルのみ)奄美市「希少野生動植物の保護と指定」(2026年5月21日更新)
奄美大島のその他の規制(国・県の天然記念物など)環境省のパンフレットの一覧に記載なし。国立公園の特別保護地区では、すべての動植物の捕獲・採取等が禁止環境省 奄美野生生物保護センター(令和6年7月時点)
上記以外の市町村の条例(沖縄島北部の村など)確認できず—
表6 シリケンイモリの採集・繁殖にかかわる指定の確認結果(2026年10月9日確認)

指定がないことは、どこで何匹採ってもよいという意味ではありません。国立公園の区域や個人の土地のルールは場所ごとに違うため、採集を考える場合は、その土地の市町村と環境省の窓口に確認するのが確実です。即売イベントでは野生個体の販売自粛も呼びかけられています(寿命・毒・値段の記事の表5)。

殖やした子をどうするかも、孵化させる前に決めておきます。表3の飼育記録では、1匹のメスから60匹が変態しました。増やしたくない場合のオスとメスの分け方はアカハライモリを繁殖させない方法と同じ考え方で、どちらの場合も野外には放しません。

よくある質問

シリケンイモリの繁殖期はいつですか?

環境省のレッドデータブックでは2亜種とも「おもに11〜6月」、沖縄県のレッドデータブックでは「おもに12月〜5月」です。オキナワでは地域によって9月まで続くことがあり、夏〜秋の繁殖も確認されています。アカハライモリ(産卵は4〜6月が中心)より冬に寄っています。

シリケンイモリの卵は何日で孵化しますか?

20℃一定で育てた研究では、人工授精から21〜37日でした(宇都宮・宇都宮 1977。同じ条件のアカハライモリは17〜27日)。上陸までは106〜136日です。ほかの水温での日数を示した資料は確認できませんでした。

野外で採ったシリケンイモリを繁殖させてもいいですか?

2026年10月9日時点で、国・沖縄県・鹿児島県・奄美市の指定種にはなっていません(表6)。ただし国立公園の特別保護地区ではすべての動植物の捕獲・採取等が禁止されているほか、確認できていない市町村の条例もあります。採集した場所の市町村と環境省の窓口に確認してください。

オキナワとアマミをペアにしてもいいですか?

交配の結果を示した資料は確認できませんでした。環境省は2亜種が遺伝的にも形態的にも大きく分かれていると説明し、求愛のフェロモンの違いも報告されています(Nakada ほか 2025)。亜種をまたいで殖やすことは避けるのが安全です。

まとめ|冬に産み、アカハライモリより育つのに時間がかかる

  • 繁殖期はおもに11〜6月(環境省)・12〜5月(沖縄県)。冬〜春が中心
  • 卵は水草に1粒ずつ。湿ったコケなど陸上に産むこともあるので、水ぎわや陸地も見る
  • 20℃で孵化21〜37日・上陸106〜136日。アカハライモリより長く見込む
  • 親は卵を食べる(野外でも確認)。卵を育てるなら親と分ける
  • 国・沖縄県・鹿児島県・奄美市の指定はないが、採集場所の規制は個別に確認。亜種を混ぜず、野外に放さない

シリケンイモリの記事の入口はシリケンイモリの飼い方|アカハライモリとの違い・必要なものです。

シリケンイモリの飼い方シリーズの最後の記事です

ほかのテーマは シリケンイモリの飼い方|アカハライモリとの違い・必要なものの記事一覧(読む順) から選べます。

参考資料

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