ニホントカゲは、幼いうちは黒い体に5本の縦じまと青い尾を持ち、おとなになると褐色に変わる、つやのあるうろこのトカゲです。飼う前に知っておきたいのは、2012年に東日本の集団が別種「ヒガシニホントカゲ」として分けられたこと、昼に日光浴をして体を温める生き物なので、飼育では紫外線ライトと日光浴用のライトが要ること、そして庭や野山で捕まえた個体を飼うなら、採集と「放さない」ことのルールがあることの3点です。
この記事では、必要な用品・餌・1年の暮らし・法律の順にまとめました。数値はすべて出典つきで、公的な資料で確かめられなかった項目(適温・寿命・値段など)は「資料なし」と書いています。

この記事の根拠:環境省の第5次レッドリスト(2026年3月)、京都府・広島県・東京都のレッドリスト、国立環境研究所、学術データベース(Reptile Database)、キョーリンの飼育ガイド、厚生労働省、e-Govの法令を整理したものです(2026年10月6日時点で確認)。飼育の実体験を記したものではありません。
【結論】ニホントカゲの飼い方の早見表
| 知りたいこと | 資料で分かること | 出典 |
|---|---|---|
| どこにいる? | 本州西部・四国・九州など西日本。東日本の集団は別種のヒガシニホントカゲ | Reptile Database/京都府RDB |
| 大きさ | 成体の頭胴長は約60〜90mm(資料により60〜80mm)。全長は200mm程度 | Reptile Database/国立環境研究所/京都府RDB |
| ケージと設備 | プラケースで飼育可能。紫外線(UV)ライトが必要、日光浴用のバスキングライトもあるとよい。浅い水入れ・シェルター・ハスクチップなどの床材 | キョーリン |
| 餌 | 野生ではミミズ・クモ・ワラジムシ・コオロギなど。飼育下は3〜4日に1回の給餌例(人工飼料。食べなければミルワームや活コオロギ) | 広島県RDB/キョーリン |
| 適温・湿度の数値 | 公的・学術資料では確認できず | — |
| 寿命・値段 | 寿命の年数・相場とも公的資料では確認できず。成熟までは生後2〜3年 | 国立環境研究所 |
| 絶滅危惧種? | 国のレッドリストには載っていない。ただし京都府(要注目種)・広島県(準絶滅危惧)など府県のリストには載る | 環境省/京都府/広島県 |
| 捕まえて飼える? | 国の捕獲禁止種ではない。国立・国定公園の特別保護地区などでは許可が必要。飼った個体を捨てると動物愛護管理法違反 | 環境省/e-Gov |
ニホントカゲとは|ヒガシニホントカゲ・オカダトカゲとの分布の違い
以前は日本の本土にすむ「青い尾のトカゲ」はまとめてニホントカゲと呼ばれていました。2012年、岡本卓氏と疋田努氏は、東日本の集団を新種ヒガシニホントカゲ(Plestiodon finitimus)として記載しました(Okamoto & Hikida 2012, Zootaxa)。現在のニホントカゲ(P. japonicus)は西日本の種、伊豆半島と伊豆諸島には3つめの種オカダトカゲ(P. latiscutatus)がすんでいます。
分布の境目について、京都府レッドデータブック2015はニホントカゲを「琵琶湖以西の本州、四国、九州」、ヒガシニホントカゲを「本州東部」と書いています。国立環境研究所の侵入生物データベースでは、ニホントカゲの自然分布は「近畿中・北西部〜西日本とその周辺島嶼」です。なお、飼料メーカーの飼育ガイドのように、2種を区別せずにニホントカゲの分布を「北海道、本州、四国、九州のほぼ全域」と書いている資料もあります(キョーリン)。

| 項目 | ニホントカゲ | ヒガシニホントカゲ | オカダトカゲ |
|---|---|---|---|
| 学名 | Plestiodon japonicus | Plestiodon finitimus(2012年記載) | Plestiodon latiscutatus |
| 分布 | 本州西部・四国・九州、大隅諸島など周辺の島。伊豆諸島の1島に人の手で持ち込まれ定着 | 本州東部・北海道、ロシア極東の一部 | 伊豆半島・伊豆諸島の大部分 |
| 成体の頭胴長 | 3種とも約60〜90mm | ||
| 見分け方 | 見た目での識別は難しい(京都府RDB)。頭のうろこ(前額板など)の組み合わせでも、正しく分けられたのは地点ごとに60〜90%で、DNAバーコードでは3種がはっきり分かれた(Okamoto & Hikida 2012) | ||
| 環境省 第5次RL | 掲載なし | 掲載なし | 伊豆諸島の3島の個体群が「地域個体群(LP)」 |
| 都府県のリストの例 | 京都府: 要注目種/広島県: 準絶滅危惧(NT) | 東京都(本土部): 絶滅危惧Ⅱ類(VU)。区部は絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN) | — |
つまり、東日本で見つかる「ニホントカゲ」は、多くの場合ヒガシニホントカゲです。2種の飼育上の違いを示した公的資料は見つからず、この記事の飼育の内容は両種に共通する資料にもとづいています。
幼体の青い尾と、おとなのオス・メスの違い
国立環境研究所によると、幼体は黒地に白〜黄色の縦じまがあり、尾は鮮やかな青です。成体は背中がオリーブ色〜茶褐色になり、尾も胴とほぼ同じ色になります。レッドデータブックひろしま2021は「雌では青い尾を残すものが多い」と書き、キョーリンの飼育ガイドも、メスは幼体の体色のままおとなになり、オスは褐色の落ち着いた色になると説明しています。繁殖期のオスはのどが赤くなり(キョーリン)、Reptile Database のヒガシニホントカゲの項では、繁殖期(3月下旬〜5月)の成体のオスの頭の下面などが鮮やかなオレンジ色になると説明されています。

ニホントカゲの飼育に必要なもの|ケージ・ライト・床材・水入れ
ニホントカゲは昼行性で、日当たりのよい場所で日光浴(バスキング)をして体温を上げてから活動し、おもに地上で暮らします(国立環境研究所)。神奈川県自然環境保全センターも、ヒガシニホントカゲについて「晴れた日の午前中にひなたぼっこをしに開けた場所に出てきます」と紹介しています。飼育では「温まる場所」と「隠れる場所」を1つのケージに用意します。用品はキョーリンの飼育ガイドに次のようにまとめられています。
| 用品 | 資料に書かれていること(キョーリン) | 数値の資料 |
|---|---|---|
| ケージ | 市販のプラケースで飼育可能。ふたの開け閉めで音が鳴ると驚いて餌を食べづらくなるので、扉式など開閉が静かなものが便利 | ケージの大きさ(cm)は資料なし |
| 紫外線(UV)ライト | 紫外線で合成されるビタミンDが、骨の維持・成長に必要なカルシウムの吸収を助けるため必要 | 照射時間・距離は資料なし |
| バスキングライト | 日光浴の代わり。体温を上げることで食欲向上・脱皮不全の予防などの効果があり、ある方が望ましい | 温度の数値は資料なし |
| 水入れ | おぼれない程度に浅いもの。毎日交換してきれいな水を保つ | — |
| 床材 | ハスクチップやバークチップが最適。爬虫類用ソイルも使えるが、粒が細かいものは餌と一緒に飲み込むおそれ | 厚さは資料なし |
| シェルター・人工水草 | 臆病なので隠れ家を用意。人工水草は体をこすりつけて脱皮の助けに使うことがある | — |
ケージ内の温度や湿度の具体的な数値は、公的機関・学術資料・メーカーの飼育ガイドのどれにも見つかりませんでした。数値を決めずに、ライトの下と反対側で温度差をつけ、トカゲが自分で場所を選べるようにする考え方は、ニシアフのUVBライトと保温器具の記事で器具ごとに整理しています(種が違うので数値は流用しないでください)。動物愛護管理法は飼い主に逃げ出しを防ぐ措置を努力義務としているので(第7条第3項)、ふたの固定も用意に含めておくと安心です。
ニホントカゲの餌|野生で食べるものと給餌の頻度
レッドデータブックひろしま2021によると、ニホントカゲは「ミミズやクモ,ワラジムシ,コオロギなどを餌とする」とされています。飼育下の給餌について、キョーリンの飼育ガイドは、同社の人工飼料を3〜4日に1回、ピンセットでつまんで与える方法を紹介しています。目の前で動かすと食いつきやすく、どうしても食べない場合はミルワームや活コオロギを与えて、ピンセットからの給餌に慣れさせるとしています。
一度に与える量、幼体と成体での回数の違い、カルシウム剤の量、「何日食べなくても大丈夫か」は、公的・学術資料では確認できませんでした。食べない日が続くときは温まる場所と隠れ家を見直し、痩せてきたら爬虫類を診られる動物病院に相談してください。病院の探し方はアカメカブトトカゲの健康管理の記事でも触れています。
ニホントカゲの1年|繁殖期・産卵・冬眠
京都での記録では、繁殖期は4〜5月で、この時期はオスが活発に動きます。梅雨のころに産卵し、メスは卵の世話をして、7月下旬ごろにふ化します。ふ化した幼体の頭胴長は30mm程度で、生後2〜3年で成熟します(いずれも国立環境研究所)。京都府レッドデータブック2015は「メスは6卵を産んだ後ふ化まで世話する」と書いており、キョーリンも「土の中で卵を守る」ことをカナヘビとの違いに挙げています。
冬について、レッドデータブックひろしま2021は「産卵や冬眠,隠れ家として,石垣の隙間や巣穴などが必要」と書いており、野外では冬眠します。一方、冬眠に入る月と明ける月、飼育下で冬眠させるときの温度、冬眠させずに加温して冬を越す方法の良し悪しを示した公的資料は見つかりませんでした。冬の扱いは、無理に冬眠させるかどうかを決める前に、購入した店や爬虫類を診られる動物病院に相談するのが安全です。
ニホントカゲの寿命と値段|資料で分かること・分からないこと
寿命の年数は、公的機関・大学・学術データベースの資料では確認できませんでした(動物の寿命データベースAnAgeにも項目なし)。分かるのは「生後2〜3年で成熟する」ことまでです。値段も公的な相場の資料はありません。
お店やイベントで買う場合は、法律の仕組みが手がかりになります。爬虫類の販売業者は、買う人に動物の現在の状態を直接見せ、対面で説明することが義務づけられています(動物愛護管理法 第21条の4)。説明する項目は施行規則 第8条の2で決まっていて、「性成熟時の標準体重、標準体長」「平均寿命その他の飼養期間に係る情報」「飼養又は保管に適した飼養施設の構造及び規模」「適切な給餌及び給水の方法」などが含まれます。寿命や設備の大きさは、この説明のときに販売者に確かめておきましょう。対面説明の流れはアカハライモリの値段の記事(両生類と爬虫類の扱いの違い)で、イベントでの買い方は初めての爬虫類イベントの記事でまとめています。
捕まえたニホントカゲを飼う前に|法律・条例と「放さない」理由
ニホントカゲは、国の法律で捕獲が一律に禁止されている種ではありません。ただし場所と地域によってルールがあり、飼い始めたあとの扱いにも法律がかかわります。
| 確認すること | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 国内希少野生動植物種 | 爬虫類12種(令和7年2月現在)にトカゲ科は含まれない=種の保存法の捕獲・譲渡の規制対象ではない | 環境省 国内希少野生動植物種一覧 |
| 国のレッドリスト | ニホントカゲ・ヒガシニホントカゲとも掲載なし。レッドリストに捕獲規制などの直接的な法的効力はない | 環境省 第5次レッドリスト(2026年3月17日) |
| 都府県のリスト | 京都府 要注目種、広島県 準絶滅危惧、東京都(本土部)ヒガシニホントカゲ 絶滅危惧Ⅱ類など。採集を条例で規制していないか、都道府県と市区町村の条例を事前に確認 | 各府県のRDB |
| 国立・国定公園 | 特別保護地区では「動物を捕獲し、若しくは殺傷し、又は動物の卵を採取し」、「動物を放つ」ことに許可が必要 | 自然公園法 第21条第3項 |
| 飼った後に捨てる | 人が飼っている爬虫類は「愛護動物」。遺棄は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 | 動物愛護管理法 第44条第3項・第4項 |
| 最後まで飼う | 命を終えるまで適切に飼養すること(終生飼養)に努める | 動物愛護管理法 第7条第4項 |
「別の場所に放さない」ことには実例があります。国立環境研究所の侵入生物データベースによると、ニホントカゲは伊豆諸島の島に人の手で持ち込まれて定着しており、ミトコンドリアDNAから九州東部〜南部が移入元と推定され、在来のオカダトカゲと競合または交雑する可能性があるとされています。同じ「トカゲ」でも地域ごとに種や系統が違うため、飼えなくなっても捕まえた場所以外には放さず、引き取り先は購入店や自治体に相談してください。採集前の確認の考え方はアカハライモリの採集ルールの記事と同じで、イベントでの野生個体の扱いは爬虫類イベントの規制の記事にまとめています。
ニホントカゲとカナヘビの違い
同じ庭先で見つかることのあるニホンカナヘビとは、科が違います(トカゲ科とカナヘビ科)。キョーリンの飼育ガイドは両者の違いを次のように整理しています。
| 比べる点 | ニホントカゲ | ニホンカナヘビ |
|---|---|---|
| 皮膚 | つるつる、テカテカ | カサカサ、キールと呼ばれる筋 |
| 体型・尾 | ずんぐり。尾は体と同じくらいの長さ | 細い。尾は体の約2倍 |
| 舌 | 先が分かれていない | 先が2つに分かれている |
| オスの婚姻色 | のどが赤くなる | おなかが黄色くなる |
| 子育て | 土の中で卵を守る | 卵を産んだらお別れ |
どちらが飼いやすいかを比べた公的資料はありませんでした。
健康と衛生|自切とサルモネラ
ニホントカゲの尾は「押さえただけで簡単に切れ」、切れた尾が激しく動いて敵の注意を引くあいだに逃げます。切れた尾は再生します(レッドデータブックひろしま2021)。キョーリンも、しっぽをつかむと切れることがあり、時間をかけてある程度は再生すると注意しています。広島県の資料は「警戒心が強く,驚くとすぐに隠れる」とも書いているので、触れる回数は少なめが基本です。
衛生面では、厚生労働省の注意喚起(2013年)が、カメなどのハ虫類は国内外を問わず多く(50〜90%)がサルモネラ属菌を保有しているとし、触れたあとは十分に手を洗うよう呼びかけています。新生児や乳児、高齢者など免疫機能の低い人は重症化しやすいとされています。病気やけがの治療は自己判断せず、爬虫類を診られる動物病院に相談しましょう。
ニホントカゲの飼育でよくある質問
ニホントカゲは絶滅危惧種ですか?
国(環境省 第5次レッドリスト)には載っていませんが、京都府は要注目種、広島県は準絶滅危惧とし、ヒガシニホントカゲは東京都(本土部)で絶滅危惧Ⅱ類です(表4)。
ニホントカゲの餌は何日に1回ですか?
キョーリンの飼育ガイドでは、人工飼料を3〜4日に1回与える方法が紹介されています。幼体と成体で回数を変える目安や、何日食べなくても大丈夫かを示した公的資料は見つかりませんでした。
しっぽが青いのはなぜですか?
青い尾は幼体の特徴で、成長すると胴と同じ色になります(国立環境研究所)。メスでは青い尾を残すものが多いとされます(広島県)。尾は切れやすく、切れたあとも激しく動くため敵の注意が尾に向き、その間に逃げると説明されています(広島県)。
ニホントカゲとヒガシニホントカゲは見分けられますか?
見た目での識別は難しいとされています(京都府RDB)。頭のうろこの組み合わせでも正しく分けられたのは地点ごとに60〜90%で、DNAバーコードが正しい識別の信頼できる手がかりになりうるとされています(Okamoto & Hikida 2012)。実用上は、どの地域で見つかった個体かが手がかりになります。
まとめ|ニホントカゲの飼い方は「温まる場所・隠れる場所・放さない」
- 西日本の種がニホントカゲ、東日本の種はヒガシニホントカゲ(2012年に分けられた)。飼い方の資料は2種共通
- 紫外線ライトは必要、バスキングライトもあると望ましい。浅い水入れは毎日交換、隠れ家とハスクチップなどの床材(キョーリン)
- 餌は昆虫などの小動物。人工飼料を3〜4日に1回の例。適温・寿命・値段の数値は公的資料なし
- 国のレッドリスト・国内希少種には載っていないが、府県のリストに載る地域がある。採集前は条例と公園の区域を確認し、飼った個体は捨てない・放さない
- 触ったら手洗い。尾は切れやすいので、つかまない
同じトカゲの仲間の飼い方は、アカメカブトトカゲの飼育方法やニシアフリカトカゲモドキの飼育方法でも紹介しています。ニホンカナヘビの飼い方はカナヘビの飼育|餌・飼い方・寿命と冬越しを資料で整理で詳しく扱っています。
参考資料(2026年10月6日確認)
- 環境省「第5次レッドリスト(鳥類及び爬虫類・両生類)の公表について」(2026年3月17日)・爬虫類・両生類リスト(PDF)
- 環境省「国内希少野生動植物種一覧」(令和7年2月現在)
- 京都府「京都府レッドデータブック2015 ニホントカゲ」
- 広島県「レッドデータブックひろしま2021 爬虫類(PDF)」
- 東京都環境局「東京都レッドリスト(本土部)2020年版 爬虫類(PDF)」
- 神奈川県自然環境保全センター「野外施設でみられる爬虫類」
- 国立環境研究所「侵入生物データベース ニホントカゲ」
- The Reptile Database「Plestiodon japonicus」「Plestiodon finitimus」「Plestiodon latiscutatus」
- Okamoto, T. & Hikida, T. (2012) Zootaxa 3436: 1–23(要旨)
- キョーリン「ニホントカゲ・ニホンカナヘビの飼い方」
- 厚生労働省「カメ等のハ虫類を原因とするサルモネラ症に係る注意喚起について」(2013年8月12日)
- e-Gov法令検索「動物の愛護及び管理に関する法律」「同法施行規則」「自然公園法」

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