ニシアフリカトカゲモドキ(以下、ニシアフ)の温度や湿度は、資料によって数値が異なります。「結局、何℃・何%にすればよいのか」と迷う方も多いでしょう。
結論からいうと、ケージ全体を一つの数値にそろえるのではなく、暖かい場所と涼しい場所、乾いた場所と湿った場所を作ることが大切です。一般的な家庭飼育では、暖側の床面を30~34℃、涼側を22~26℃、ケージ内の湿度を50~70%程度から調整し、加湿シェルターを常設します。
ただし、この湿度は複数の飼育資料をまとめた実用上の出発点であり、単一の公式基準ではありません。測定位置、季節、ケージ、個体の行動によって調整してください。飼育環境全体の準備は、ニシアフリカトカゲモドキの飼育方法で確認できます。
この記事は「ニシアフリカトカゲモドキの飼育」シリーズの一部です。温度・餌・ケージの全体像は完全ガイドにまとめています。
▶ ニシアフリカトカゲモドキの飼育方法|初心者向け完全ガイド
ニシアフの適正温度と湿度

ニシアフの温度管理では、暖側と涼側を別々に測ります。湿度も、ケージ内の通常部分と加湿シェルターを分けて考えましょう。
| 測定場所・項目 | 管理の出発点 | 確認方法 |
|---|---|---|
| 暖側の隠れ家・床面 | 30~34℃ | 固定したプローブ式温度計と放射温度計 |
| 涼側の床面付近 | 22~26℃ | デジタル温度計 |
| 夜間 | おおむね20~25℃、急低下を避ける | 最高・最低温度を記録できる温度計 |
| ケージ内の湿度 | 50~70%程度から調整 | デジタル湿度計 |
| 加湿シェルター | 床材がしっとりし、内部が蒸れない状態 | 触感、結露、臭い、必要に応じて内部の湿度計 |
この表は、ReptiFilesの飼育ガイドとZoo Medの飼育情報を照合した管理の目安です。器具を設置したら、生体を入れる前に最低24時間は試運転し、昼夜の最高・最低値を確認してください。
暖側は30~34℃、涼側は22~26℃から調整する
暖側の隠れ家や床面は30~34℃、涼側は22~26℃を出発点にします。初めは暖側を31~32℃付近に合わせ、暖側・涼側の利用状況や食欲、排泄を見ながら微調整すると管理しやすくなります。
ReptiFilesは暖かい季節の暖側を32~34℃、涼側を22~25℃としています。Zoo Medは昼間のケージ内を約22~31℃、暖まる場所を約32℃と案内しています。数値には差がありますが、どちらも温度勾配を設ける点は共通しています。
夜間は、おおむね20~25℃の範囲を目安に急激な低下を避けます。Zoo Medは約21~22℃、ReptiFilesは暖かい季節を22~25℃としています。ReptiFilesには涼しい季節を17~18℃に下げる設定もありますが、これは意図的な季節サイクルです。初心者が通常飼育で再現する必要はありません。
床面温度と空気温度は同じとは限りません。ニシアフの腹部が触れる場所をプローブ式温度計で測り、放射温度計で周辺の表面温度も確認します。
湿度は50~70%を出発点に加湿シェルターを併用する
ケージ内の湿度は50~70%程度を出発点にし、常に加湿シェルターを用意します。ケージ全体を高湿度に固定するのではなく、ニシアフが乾いた場所と湿った場所を選べる環境にしてください。
ReptiFilesは、涼しく乾いた季節の日中を約50%、暖かく湿った季節の日中を70~80%としています。一方、Zoo Medは湿度の固定値ではなく、湿度室を常設するよう案内しています。この違いを踏まえ、本記事では通常部分を50~70%程度から調整し、脱皮や休息に使える湿った微環境を別に作る方法を勧めます。
加湿シェルターの床材は、握って水が流れ出ない程度に湿らせます。全体がびしょ濡れ、結露が続く、床材が臭う場合は過湿や換気不足を疑ってください。反対に、床材がすぐ乾く、脱皮殻が指先や尾先に残る場合は、加湿シェルターの水分と温度、利用しやすい位置かを確認します。
野外の数値をそのまま固定設定にしない
野外調査の温湿度は、飼育下の設定値ではなく、ニシアフが変化する環境で活動していることを理解する資料として使います。
British Herpetological Societyに掲載されたガーナ北西部の自然史研究では、夜間に見つかった23個体のうち19個体が、午後に雨が降った日またはその翌晩に確認されました。そのときの相対湿度は60~95%でした。一方、長く雨が降っていない乾季には、相対湿度17%と29%で活動個体が見つかった例もあります。調査地の平均的な深夜気温は25.8℃でした。
発見時の幅が広いからといって、ケージを17%まで乾燥させたり、95%に固定したりするのは適切ではありません。飼育下では、安全な温度勾配と乾湿差を作り、個体が移動して選べるようにします。Merck Veterinary Manualも、爬虫類が暖かく乾いた場所と、より涼しく湿った場所を選べる温湿度勾配の重要性を説明しています。
温湿度計は暖側・涼側・加湿シェルターで分ける
温度計を一つだけ置くと、暖側が適温でも涼側まで暑い状態や、反対に床面だけ冷たい状態を見落とします。最低でも、暖側の床面と涼側の床面付近を分けて測ってください。
- 暖側は、ニシアフが休む隠れ家の床面にプローブを固定する
- 涼側は、熱源から離れた床面付近の空気温度を測る
- 湿度計は通常部分に置き、必要なら加湿シェルター内も別に測る
- 放射温度計は表面温度の確認に使い、空気温度計の代わりにしない
- 霧吹き直後の一時的な数値だけでなく、乾くまでの変化を記録する
温度勾配はケージの床面積や熱源の位置にも左右されます。ニシアフのケージサイズとレイアウトも合わせて確認してください。
保温器具はサーモスタットで管理する
ヒートマットや保温球は、ケージ、床材、室温によって温まり方が変わります。対応するサーモスタットで制御し、独立した温度計で実測値を確認してください。
GEXのイージーグローサーモ製品情報では、設定温度を超えると保温器具への通電を止め、下がると再び通電する仕組みが案内されています。ただし、サーモスタット自体に冷却能力はありません。夏に室温ごと上がった場合は、エアコンなどで部屋を冷やす必要があります。
製品ごとに対応できる熱源、消費電力、センサー位置が異なります。説明書に従い、センサーを熱源へ直接触れさせたり、生体が動かせる状態にしたりしないでください。器具ごとの選び方は、ニシアフのUVB・保温器具の選び方で詳しく扱います。
ニシアフの温度・湿度を季節ごとに管理する

日本の春夏秋冬を、原産地の雨季・乾季へそのまま当てはめることはできません。季節を意図的に再現するより、室温の変化に合わせてケージ内の勾配を保つことを優先します。
春は昼夜差を確認して設定を戻す
春は日中が暖かくても、明け方だけ室温が下がる日があります。最高・最低値を記録できる温度計で夜間の最低温度を確認し、暖側が30~34℃、涼側が22~26℃に収まるように調整します。
暖房を切ると湿度の下がり方も変わります。霧吹き回数を固定せず、通常部分が乾く時間と加湿シェルターの水分を見て調整してください。
夏は加温より高温からの逃げ場を優先する
夏は、暖側の設定よりも涼側が高くなりすぎていないかを優先して確認します。サーモスタットが熱源を切っても、室温が高ければケージは冷えません。涼側が目安を超え続ける場合は、エアコンで室温を下げます。
ケージへ直射日光が当たらない位置に置き、通気口を塞がないでください。冷却ファンを使う場合は乾燥が速くなるため、加湿シェルターも同時に確認します。ケージ全体の結露や床材の過湿が続く場合は、霧吹きを減らし、換気と水入れの位置を見直します。
秋は夜間の冷え込みに備える
秋は日中の見た目が変わらなくても、夜間の最低温度が先に下がります。保温器具を使い始める前に、空の状態でセンサー位置と作動を確認してください。
床材やレイアウトを変えた場合も再測定が必要です。床材の厚さや隠れ家の位置が変わると、同じ器具・設定でも床面温度が変化します。
冬は保温と乾燥を別々に対策する
冬は、部屋の暖房とケージ用の保温器具を組み合わせ、暖側と涼側の両方を維持します。熱源を強くするだけでは、涼側まで熱くなったり、ケージ内が乾きすぎたりすることがあります。
保温中は相対湿度が下がりやすいため、加湿シェルターが乾いていないか毎日確認します。ただし、室内用加湿器の蒸気をケージへ直接当てる方法は、結露や過湿の管理が難しくなるため避けます。ニシアフの冬の飼育方法では、保温器具の組み合わせや停電時の備えを詳しく解説します。
数値が外れたときは原因を順番に確認する
一度に複数の器具や設定を変えると、何が効いたのか分からなくなります。まず測定位置と温湿度計の異常を確認し、次に室温、熱源、換気、水分の順で調整しましょう。
| 状態 | 最初に確認すること | 主な調整 |
|---|---|---|
| 暖側が低い | センサーの固定位置、床材の厚さ、室温 | 対応範囲内で設定や熱源を見直す |
| 暖側が高い | サーモスタットの作動、熱源との距離 | 通電を止め、安全な温度まで下げる |
| 涼側まで高い | 室温、直射日光、換気 | エアコンで室温を下げる |
| 湿度が低い | 加湿シェルター、水入れ、換気量 | シェルターへ給水し、乾き方を再確認する |
| 結露や臭いが続く | 霧吹き量、床材、通気口 | 水分を減らし、換気と清掃を見直す |
| 数値が急に変わる | 電池、センサーずれ、器具の故障 | 別の温湿度計で照合する |
温度が安全範囲を大きく外れた、ぐったりして動かない、呼吸がおかしいなどの異変がある場合は、設定を直すだけで様子を見続けず、爬虫類を診療できる動物病院へ相談してください。
よくある質問
夜も保温器具を使う必要がありますか?
夜間に目安を下回る場合は必要です。まず最低温度を実測し、必要な時間だけ対応する保温器具をサーモスタットで制御します。昼用の強い光を夜も点灯し続ける方法は避けてください。
湿度を100%にしたほうがよいですか?
ケージ全体を常時100%にする必要はありません。ReptiFilesには湿った季節の夜間を100%とする設定がありますが、これは季節変化を含むガイドです。初心者は通常部分を過湿にせず、加湿シェルターで湿った微環境を用意するほうが管理しやすいでしょう。
霧吹きは1日何回必要ですか?
固定回数では決められません。ケージの通気、床材、室温、季節で乾く速さが変わるためです。霧吹き後の上昇だけでなく、次に乾くまでの湿度と床材の状態を確認してください。
留守中の温度管理はどうしますか?
事前に普段と同じ条件で数日間運転し、最高・最低値と器具の作動を確認します。長期の留守では、停電や故障時に確認できる人も決めておきましょう。
脱皮前は湿度を上げますか?
まず加湿シェルターが十分に湿っているかを確認します。ケージ全体を濡らし続けるのではなく、ニシアフが湿った場所を選べる状態を保ちます。脱皮殻が残った場合は無理にはがさず、温湿度と体調を見直し、改善しないときは獣医師へ相談してください。
ニシアフの温度・湿度管理まとめ
- 暖側の床面は30~34℃、涼側は22~26℃から調整する
- 夜間はおおむね20~25℃を目安に、急激な低下を避ける
- ケージ内の湿度は50~70%程度を出発点にする
- 通常部分とは別に、湿った加湿シェルターを常設する
- 暖側、涼側、加湿シェルターを分けて測る
- 夏は室温の冷却、冬は保温と乾燥対策を別々に考える
- 季節やレイアウトが変わったら、最低24時間は再測定する
数値を一度合わせて終わりにせず、温度勾配、乾湿差、ニシアフが選んでいる場所を記録してください。季節ごとに実測して調整することが、安定した温度・湿度管理につながります。
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参考資料
- British Herpetological Society, Notes on the natural history of the eublepharid gecko Hemitheconyx caudicinctus in northwestern Ghana(2026年7月15日確認)
- Merck Veterinary Manual, Nutrition in Reptiles(2026年7月15日確認)
- ReptiFiles, African Fat-Tailed Gecko Care Sheet(2026年7月15日確認)
- Zoo Med, African Fat Tail Gecko(2026年7月15日確認)
- GEX, イージーグローサーモ(2026年7月15日確認)

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