ニホンヤモリは、家の壁や窓ガラスに張り付いている姿でおなじみの、夜行性の小さな爬虫類です。この記事では、家に入ってきた1匹を飼えるか調べている人に向けて、餌(生き餌の種類・回数・水分)を中心に、温度と冬越し、寿命、捕まえた個体を飼う前に確かめたい法律やルールを整理しました。数字はすべて出典つきで、公的な資料や論文で確かめられなかった項目は「資料なし」と書いています。

この記事の根拠:国立環境研究所の侵入生物データベース、環境省・東京都の公開資料、e-Gov 法令検索の条文、京都大学などの研究者による論文、飼料メーカー(キョーリン)の飼育ガイドを整理したものです(2026年10月6日時点で確認)。ニホンヤモリの飼育の実体験を記したものではありません。
【結論】ニホンヤモリの飼い方の早見表
| 知りたいこと | 資料で分かること | 出典 |
|---|---|---|
| どんな生き物? | 木造家屋などの建物にすむ夜行性のヤモリ。昆虫などの小さな無脊椎動物を食べる | 国立環境研究所 |
| 大きさ | 体長100〜140mm・頭胴長50〜72mm・体重2.3〜4.0g | 国立環境研究所 |
| 餌 | 人工飼料を毎日1回ピンセットで。食べないときは活コオロギで慣らす | キョーリン |
| 水 | ケースの壁ではなくシェルターに霧吹きすると、なめて水分をとる | キョーリン |
| 温度 | 25℃前後で最も活発。冬はパネルヒーターを一部に敷いて越冬 | キョーリン |
| 寿命 | 野外で少なくとも12年の記録。飼育下の資料はなし | 京都大学の研究者(2026) |
| 法律・リスト | 規制種ではなく、環境省レッドリストにも掲載なし。飼い始めると「愛護動物」になり、遺棄には罰則 | 環境省/e-Gov |
このページはニホンヤモリの記事の入口で、餌・寿命・卵の詳しい記事を順に追加する予定です。
ニホンヤモリとは|家のまわりで暮らす夜行性のヤモリ
ニホンヤモリ(Gekko japonicus)は、ヤモリ科ヤモリ属の爬虫類です。国立環境研究所 侵入生物データベースは、木造家屋を中心とした建造物にすみ、夜行性で、昆虫を捕まえるために灯火の近くで見られることが多いと説明しています。東京都レッドデータブック(本土部)2023も、電灯などに集まる昆虫を待ち構えている様子がよく観察される、と書いています。
壁や窓に張り付けるのは、指の裏にある趾下薄板(しかはくばん)のおかげです。環境省の皇居外苑の解説は、ナノメートル単位の細かい剛毛でできたこの器官が壁や窓の凹凸にかみ合うことで張り付ける、と説明しています。

| 資料 | 体の長さ | 頭胴長(頭から総排泄口まで) | 体重 |
|---|---|---|---|
| 国立環境研究所 侵入生物DB | 体長100〜140mm | 50〜72mm | 2.3〜4.0g |
| 東京都レッドデータブック(本土部)2023 | 記載なし(尾は頭胴長と同じくらいの長さ) | 5〜7cm程度 | 記載なし |
| 京都大学の研究者の報告(2026) | 12年以上生きたオス1匹: 再生尾52mm | 67mm | 5.2g |
京都大学の研究者が報告したオスは5.2gで、国立環境研究所の幅(2.3〜4.0g)より重い1匹の記録です。
オスとメスの見分け方
国立環境研究所の記載では、オスは尾の付け根が太く、総排泄口の左右に側肛疣(そくこうゆう)と呼ばれる疣状の構造が2〜4対あります。メスについての見分けの記述はこの資料にはありません。
日本の個体群は「人が持ち込んだ」可能性がある
国立環境研究所の侵入生物データベースは、分布を朝鮮半島南部・中国大陸東部と、本州(秋田県以南)・四国・九州・対馬としたうえで、「日本産の集団は全て人為分布という説もある」と書いています。東京都レッドデータブック(本土部)2023も人為移入の可能性にふれ、近年は北海道南部にも侵入している、と記しています。
捕まえたヤモリを飼う前に|環境省の呼びかけと法律
家の中に入ってきたヤモリを見つけたとき、まず知っておきたいのは、環境省の皇居外苑の解説が「見付けても捕まえようとせず観察にとどめてあげてください」と呼びかけていることです。体があまり頑丈ではなく、捕まえようとすると尻尾を自切することがあるためです。同じ記事では、室内に入ってきた個体を逃がしています。それでも飼う場合の、法律やリストでの扱いは次のとおりです。
| 確認したもの | ニホンヤモリの扱い | 出典 |
|---|---|---|
| 外来生物法の特定外来生物 | 指定なし(爬虫類22種類にヤモリ科は含まれない) | 環境省 特定外来生物等一覧 |
| 種の保存法の国内希少野生動植物種 | 指定なし(令和7年2月現在458種。ヤモリ科の種は含まれない) | 環境省 国内希少野生動植物種一覧 |
| 環境省 第5次レッドリスト(2026年3月公表) | 掲載なし(同じヤモリ属のタワヤモリ・ニシヤモリなどは掲載) | 環境省 第5次レッドリスト(爬虫類) |
| 東京都レッドリスト(本土部)2020 | 本土部で準絶滅危惧(NT)、区部で絶滅危惧Ⅱ類(VU)、北多摩・南多摩・西多摩は留意種 | 東京都 レッドリスト(本土部)2020 爬虫類 |
| 動物愛護管理法 第44条 | 人が占有している爬虫類は「愛護動物」。遺棄は1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金 | e-Gov 法令検索 |
| 自然公園法 第21条 | 国立・国定公園の特別保護地区では、動物の捕獲に許可が必要(種を問わない) | e-Gov 法令検索 |
飼い始めたら「愛護動物」になる
動物愛護管理法第44条は「人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するもの」を愛護動物とし、遺棄に罰則を定めています。捕まえて飼い始めたヤモリも、文言上はこれに入ります。飼えなくなって外へ放すことが「遺棄」に当たるかを個別に解説した公的資料は見つからなかったので、飼い始める前に、最後まで世話を続けられるかを決めておくのが安全です。
捕まえた場所以外へ放さない
環境省は外来種による被害を防ぐため、「入れない・捨てない・拡げない」の外来種被害予防三原則を掲げています。ニホンヤモリは特定外来生物ではありませんが、国立環境研究所のデータベースは「日本の外来生物」として扱い、四国・瀬戸内の集団が人為分布なら在来のタワヤモリとの交雑は人為的な撹乱になる、と指摘しています。別の地域へ持ち出したり放したりしないでください。
似たヤモリが国のレッドリストに載っている
環境省の第5次レッドリストには、同じヤモリ属のタワヤモリ・ニシヤモリ(準絶滅危惧)、ヤクヤモリ・タカラヤモリ・オキナワヤモリ(絶滅危惧Ⅱ類)が載っています。The Reptile Database もタワヤモリとの交雑を記載しています。西日本や島で見つけた個体は、ニホンヤモリと決めつけないでください。
自宅の外で捕まえる場合は、特別保護地区のほか地域の条例や保護区もかかわるので、お住まいの自治体の情報を確かめてください。採集ルールの考え方はアカハライモリの採集についての記事でも整理しています。
飼育環境|ケース・温度・水・隠れ家
飼料メーカーのキョーリンの飼育ガイドは、ニホンヤモリを「野外でつかまえた両性爬虫類を飼おう」という企画で取り上げています。用意するものを表にまとめました。
| 用意するもの | メーカーの案内 | 理由 |
|---|---|---|
| ケース | 市販のプラケースで飼育できる。扉式など開け閉めが静かなものが便利。体が通れる程度の小さな穴もふさぐ | 音に驚くと餌を食べづらい/脱走名人 |
| 床材 | キッチンペーパーでの管理が最も簡単。濡らしておくと湿度も保てる | 管理のしやすさと湿度 |
| シェルター | 身を潜められる、影ができるものを入れる。水入れ付きのものがよく使われる | 隠れ場所と水場を兼ねる |
| 霧吹き | ガラスやアクリル面ではなくシェルターにかける | 壁面は水あかになる。水滴をなめて水分補給する |
| パネルヒーター | 全面に敷かず、涼しいところも作る | ヤモリが自分で温度を選べるようにする |
温度は25℃前後が目安
キョーリンは、日本にすむヤモリなので温度の幅にはある程度耐えるものの、25℃前後が最も活発に活動するとしています。研究でも、成体を15〜25℃のいくつかの温度で調べた実験で、温度が高いほど活発だったと報告されています(Tawa ほか 2014, Current Herpetology)。
湿度の目標値や紫外線ライトの要否を示した公的資料・論文は見つからなかったので、数値は書きません。
昼と夜の区別をつける
同じ論文では、暗いままの条件でも約24時間の活動リズムが続き(体内時計)、明るい12時間・暗い12時間の条件では、どの温度でも明かりが消えて1〜2時間後に活動のピークがありました。昼は明るく夜は暗い部屋に置くと、このリズムに沿った環境になります。
ニシアフリカトカゲモドキやヒョウモントカゲモドキも「ヤモリの仲間」と呼ばれますが、まぶたが動くトカゲモドキ科で、温度や湿度の組み立てはニホンヤモリと別に考えます。違いはニシアフとレオパの違い、飼い方はニシアフリカトカゲモドキの飼育方法にまとめています。
ニホンヤモリの餌|生き餌の種類・回数・水分
野外で食べているものと、飼育で使われている餌を分けて整理します。
野外では何を食べている?
| 分かっていること | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 食べ物の種類 | 昆虫などの小型無脊椎動物(肉食性) | 国立環境研究所/東京都RDB2023 |
| 具体的な例 | クモ、ワラジムシ、ハエなどの虫 | 環境省 皇居外苑の解説 |
| 食べ方 | 街灯や民家の光に集まる虫をねらい、電灯などに集まる昆虫を待ち構える | 環境省 皇居外苑の解説/東京都RDB2023 |
| 共食い | 成体が孵化直後の幼体を食べることがある | 国立環境研究所 |
光に集まる小さな虫を待ち伏せして食べる生き物で、野菜や果物を食べるという記載は確認した資料にありません。成体が幼体を食べることがあるので、大きさの違う個体を同じケースに入れるのは避けたほうが安全です。
飼育で使われる餌(メーカーの案内)
キョーリンの案内は、次の順番です。
- 人工飼料: 同社の昆虫食の人工飼料(ゲルはそのまま、ドライは半分に割ってふやかす)をピンセットで与える
- 与え方のこつ: ヤモリの目の前で動かすと、高い確率で食いつく
- 食べないとき: 活コオロギをピンセットで与えて慣れさせる
人工飼料を選ぶときに製品表示で確かめたい点(対象種・保存方法・1回量など)は、ニシアフの餌の記事の人工飼料の節も参考になります。種は違いますが、確かめる観点は共通です。
与える回数と時間帯
キョーリンは人工飼料について「毎日1回」を目安にしています。一方、コオロギなど生き餌の数や回数を示した公的資料・論文は見つかりませんでした。この記事では、生き餌の回数の数字は作らずにおきます。
時間帯については、前の節の実験で明かりが消えてから1〜2時間後に活動のピークがありました(図の下段)。部屋の明かりを消してしばらくたった時間帯が、ヤモリのよく動く時間です。
水分のとり方
水は、キョーリンの案内どおりシェルターに霧吹きして水滴をなめさせる方法と、濡らしたキッチンペーパーで湿り気を保つ方法が基本です。壁面への霧吹きは水あかになるとされ、水入れ付きのシェルターもよく使われます。
家にいる虫を与えてもいい?
家の中で捕まえた虫を餌にしてよいか(殺虫剤などの影響を含む)を確かめた公的資料は見つからず、この記事では安全性を判断できません。
冬の越し方|冬眠させずにヒーターで
キョーリンは、野外では春〜秋に見つけられるとしたうえで、飼育下では「冬眠は難しいので、パネルヒーターを使用して越冬させる方が無難」としています。ヒーターは一部に敷き、涼しい場所を残します。
停電で急に冷えたときの備えは、ニシアフ向けですが冬のニシアフ飼育|保温方法・電気代・停電対策が参考になります。
寿命|野外で12年以上生きた記録
2026年5月に公開された京都大学の研究者の論文(Komatsubara ほか 2026, Herpetology Notes)は、野外のニホンヤモリが少なくとも12年生きた記録を報告しています。
- 2012年7月、京都大学の研究施設の建物の壁で前年生まれと推定される若い個体に印をつけて放した
- 2024年5月、同じ施設で捕まえたアオダイショウが吐き出した1匹が、印からこの個体と確認された
- 捕食で死んだ記録なので、生きられる長さとしては控えめな見積もりかもしれない、と論文は述べている
同じ論文によると、ヤモリ属の寿命の記録はこれまで飼育下のものしかなく、それも熱帯・亜熱帯の5種に限られていたとのことです。ニホンヤモリの飼育下での平均寿命や最長記録を示した公的資料・論文は、今回見つけられませんでした。
繁殖と卵|産卵は初夏、1回に2個
国立環境研究所の侵入生物データベースによると、産卵期は5月上旬から7月下旬で、メスは戸袋や壁のすき間、天井裏などに卵を産みつけます。1回に産む卵は2個、卵の大きさは長径13〜15mm・短径9〜9.5mm程度です。孵化までは温度により40〜90日で、28度程度ではオスに、24度や32度ではメスに偏るとされています。
京都の集団を調べた研究(Ikeuchi 2004, Journal of Herpetology)では、メスの体内で卵が育つのは4〜7月で、交尾の時期は活動期間全体に広がっていると推定されています。孵化はふつう7〜9月で、孵化したときの頭胴長は26〜29mmとされています(Komatsubara ほか 2026 が文献を引用)。

イモリとヤモリの違い|両生類と爬虫類
名前は似ていますが、イモリは両生類、ヤモリは爬虫類です。環境省の第5次レッドリストでも、タワヤモリなどのヤモリの仲間は「爬虫類」の表に、アカハライモリやシリケンイモリは「両生類」の表に分かれて載っています(環境省 報道発表 2026年3月17日)。イモリの体のつくりはアカハライモリとは?生態・特徴、飼い方はアカハライモリの飼い方完全ガイドとアカハライモリの飼育セットにまとめています。
公的な資料・論文で確認できなかったこと
飼育記事でよく書かれる項目のうち、根拠となる公的資料・論文が見つからなかったものです。
| 項目 | 確認できたこと | この記事での扱い |
|---|---|---|
| 湿度の目標値(%) | 数値の記載なし。メーカーは「濡らしたキッチンペーパーで湿度を保てる」とだけ記載 | 数値を書かない |
| 生き餌の数・回数 | 人工飼料の「毎日1回」のみ(キョーリン) | 生き餌の回数は書かない |
| カルシウム剤の要否と量 | ニホンヤモリについての記載は見つからず | 書かない |
| 餌を食べずに耐えられる日数 | 記載なし | 書かない |
| 飼育下の寿命 | 野外で12年以上の記録のみ(京都大学の研究者 2026) | 野外の記録として紹介 |
| 紫外線ライトの要否 | 記載なし | 書かない |
| 販売価格 | 公的な価格資料なし | 書かない |
ニホンヤモリの飼育でよくある質問
Q. ニホンヤモリの飼育は難しいですか?
A. 難しさを公的に評価した資料はありません。キョーリンはプラケース・キッチンペーパー・シェルター・霧吹き・パネルヒーターで飼う方法を紹介していますが、環境省の皇居外苑の解説は、体が頑丈ではなく自切もあるとして、観察にとどめるよう呼びかけています。
Q. 餌は1日何回あげればいいですか?
A. キョーリンは人工飼料を毎日1回としています。生き餌の回数の公的資料は見つかりませんでした。活動のピークは消灯の1〜2時間後なので(Tawa ほか 2014)、夜の時間帯が合っています。
Q. ニホンヤモリの寿命は何年ですか?
A. 野外で少なくとも12年生きた記録があります(Komatsubara ほか 2026)。飼育下の寿命を示した公的資料・論文は見つかりませんでした。
Q. 家に入ってきたヤモリはどうすればいいですか?
A. 環境省の皇居外苑の解説は、室内に入った個体を逃がし、見つけても観察にとどめるよう呼びかけています。飼う場合は、その時点で動物愛護管理法の愛護動物になります。
まとめ|ニホンヤモリを飼う前に押さえたいこと
- 家のまわりにすむ夜行性のヤモリ。体長100〜140mm(国立環境研究所)
- 餌はメーカーの案内で人工飼料を毎日1回、食べないときは活コオロギをピンセットで。生き餌の回数の公的資料はない
- 水はシェルターへの霧吹きと濡らしたキッチンペーパー。温度は25℃前後、冬はパネルヒーターを一部に
- 寿命は野外で少なくとも12年の記録(京都大学の研究者 2026)
- 規制種ではないが、飼い始めると愛護動物。別の場所へ放さない
参考資料(2026年10月6日確認)
- 国立環境研究所 侵入生物データベース「ニホンヤモリ」(2009年8月10日更新)
- 環境省 皇居外苑「家を守るヤモリ」(北の丸公園ブログ・2018年8月)
- 環境省 報道発表「第5次レッドリスト(鳥類及び爬虫類・両生類)の公表について」(2026年3月17日)/第5次レッドリスト(爬虫類・両生類)PDF
- 環境省 国内希少野生動植物種一覧(令和7年2月現在)
- 環境省 特定外来生物等一覧
- 環境省 侵略的な外来種(外来種被害予防三原則)
- 東京都 レッドリスト(本土部)2020 爬虫類/東京都レッドデータブック(本土部)2023 爬虫類
- e-Gov 法令検索「動物の愛護及び管理に関する法律」第44条
- e-Gov 法令検索「自然公園法」第21条
- Komatsubara, T., Mori, A., Jono, T. (2026) A longevity record of the Japanese Gecko, Gekko japonicus, in the wild. Herpetology Notes 19: 349–351
- Tawa, Y., Jono, T., Numata, H. (2014) Circadian and temperature control of activity in Schlegel’s Japanese Gecko, Gekko japonicus. Current Herpetology 33(2): 121–128
- Ikeuchi, I. (2004) Male and female reproductive cycles of the Japanese Gecko, Gekko japonicus, in Kyoto, Japan. Journal of Herpetology 38(2): 269–274
- The Reptile Database: Gekko japonicus
- キョーリン「ニホンヤモリの飼い方・飼育方法」

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