アカハライモリの飼育を始めようと思ったとき、「まず何を買えばいいの?」と迷ってしまう方はとても多いです。
ホームセンターのペットコーナーや通販サイトを眺めていると、水槽、ろ過フィルター、砂利、ヒーター……と様々なアイテムが並んでいて、どれが必要でどれが不要なのか判断がつかないですよね。
この記事では、アカハライモリの飼育セットとして「初心者が最初に揃えるべきもの」を完全網羅してご紹介します。
必須アイテムから「あると便利」なオプションアイテムまで、それぞれの選び方の基準も合わせて解説しますので、この記事を読み終えれば、迷わずお買い物を済ませて飼育スタートできる状態になるはずです。
アカハライモリの飼育を始める前に知っておくべきこと

アカハライモリはどんな生き物?
アカハライモリ(Cynops pyrrhogaster)は、日本固有種の両生類で、本州・四国・九州の池や水田、小川などに広く生息しています。
体長は成体で10〜13cm程度、背面は黒褐色で腹面が鮮やかな赤〜橙色の斑紋を持つのが最大の特徴です。
飼育難易度は比較的低く、丈夫で長生き(10年以上生きる個体も珍しくない)なため、両生類飼育の入門種として非常に人気があります。
一方で、生息地となる水田や池沼の減少・水質悪化などにより、環境省のレッドリスト2020では「準絶滅危惧(NT)」に指定されています。身近な生き物に見えても、野生個体数は確実に減少しており、飼育個体を大切に育てることが種の保全にもつながります。
飼育環境の基本的な考え方
アカハライモリは「半水生」の生き物です。
水中で生活することが多いですが、陸地にも上がります。そのため、飼育環境は「水場メイン+小さな陸地あり」のレイアウトが理想的です。
また、高温に非常に弱いという点が、飼育で最も注意すべきポイントです。25℃を超えるような環境は体調不良の原因となり、28℃以上では命に関わります。
夏場の温度管理が、アカハライモリ飼育の最大のハードルと言っても過言ではありません。
アカハライモリの飼育セット:必須アイテム一覧

① 飼育ケース(水槽・ケージ)
飼育環境の土台となる最重要アイテムです。
アカハライモリの飼育ケースとして最もポピュラーなのはガラス製の水槽ですが、脱走防止のための蓋(フタ)が必ず必要になります。
アカハライモリは非常に脱走能力が高い生き物で、水槽とフタのわずかな隙間からするりと抜け出してしまいます。乾燥した室内で脱走した場合、発見が遅れると命に関わりますので、フタは必須と考えてください。
飼育ケースのサイズの選び方
飼育する頭数に応じて選ぶのが基本です。
1〜3匹程度であれば30cm水槽(30×20×25cm)でも飼育できますが、余裕を持った環境を作るなら45cm水槽(45×30×30cm)が非常に使いやすいサイズ感です。
5匹以上の飼育を検討しているなら、60cm規格水槽(60×30×36cm)を最初から選んでおくと、後々レイアウトの自由度も上がり快適です。
おすすめの飼育ケースタイプ
ガラス水槽のほか、爬虫類・両生類専用のプラスチックケースや、コレクションケースと呼ばれるアクリル製のケースも使用できます。
ガラス水槽は重量がありますが視認性が高く、コケや汚れも落としやすいのでメンテナンスが楽です。プラスチック・アクリルケースは軽量で扱いやすいですが、細かい傷がつきやすい点がデメリットです。
② フタ(脱走防止)
先述の通り、アカハライモリの飼育においてフタは「オプション」ではなく「必須」です。
水槽を購入する際は、必ずセットで対応サイズのフタを用意してください。市販のガラス水槽には対応するガラス蓋や網蓋が販売されています。
網蓋(メッシュ蓋)は通気性が高くコケの発生を抑えやすいメリットがありますが、目が粗いと脱走される可能性があります。アカハライモリの体よりも明らかに小さい目の細かさのものを選びましょう。
また、フタの上に小さな重りを乗せておくとさらに安心です。
③ 底砂(床材)
水槽の底に敷く砂や砂利のことです。
底砂がない「ベアタンク」での飼育も可能ですが、底砂を敷くことでバクテリアが定着しやすくなり水質が安定しやすくなります。また、アカハライモリが底砂の上を歩く際の自然な動きも観察できます。
底砂の種類と選び方
アカハライモリの飼育に適した底砂として代表的なのは以下の3タイプです。
大磯砂は粒が均一で管理がしやすく、コスパも良い定番の選択肢です。
田砂・川砂は粒が細かく、アカハライモリが砂をかき回す自然な行動を引き出しやすい点が魅力です。
ソイルは水質をやや弱酸性に傾ける作用があり、バクテリアの定着も良好ですが、数年で崩れてリセットが必要になります。
粒が非常に大きい砂利は誤飲のリスクがあるため避けるのが無難です。
④ フィルター(ろ過装置)
水槽内の水質を維持するために欠かせないアイテムです。
水換えだけで水質を管理するという方法もありますが、フィルターを導入することで水換えの頻度を減らしながら安定した水質を保てます。アカハライモリは水質の悪化に比較的敏感なため、フィルターの設置を強くおすすめします。
アカハライモリ飼育に適したフィルターの種類
スポンジフィルターは構造がシンプルで目詰まりしにくく、吸い込み口が細かいのでアカハライモリの幼体や小型個体でも安全です。エアポンプと組み合わせて使用します。
底面フィルターは底砂全体がろ材になるため、ろ過能力が高く安定した水質を作りやすいです。ただし底砂の種類との相性を考慮する必要があります。
外掛けフィルターは水槽の縁に掛けるだけで設置できる手軽さが魅力で、初心者にも扱いやすいタイプです。ただし流量が強すぎると水流がアカハライモリにとってストレスになる場合があるため、流量調整ができるものを選ぶか、フィルターの向きを工夫して水流を和らげる配慮が必要です。
投げ込み式フィルター(ロカボーイなど)は最も安価で手軽ですが、ろ過能力はやや劣ります。小型水槽や一時的な飼育環境には十分です。
⑤ エアポンプ(ぶくぶく)
スポンジフィルターや投げ込み式フィルターを使用する場合は、エアポンプが必要です。
また、フィルターを使用する場合でも、夏場の水温上昇を防ぐためにエアレーションを行うことで水中の溶存酸素量を増やし、水温を少し下げる効果が期待できます。
静音性の高いエアポンプを選ぶと、生活音が気になりにくくなります。
⑥ エアチューブ・エアストーン(逆流防止弁)
エアポンプを使用する際のセット品です。
エアチューブはエアポンプとフィルター・エアストーンをつなぐシリコン製のチューブで、適切な長さに切って使用します。
逆流防止弁(チェックバルブ)は地味ながら重要なアイテムで、停電や不意にエアポンプが止まったときに水槽の水がエアチューブを逆流してエアポンプに流れ込むのを防ぎます。
⑦ 水温計
アカハライモリの飼育において、水温管理は最重要事項のひとつです。
常に水温を把握できるよう、水温計は必ず設置してください。アナログの吸盤タイプのものが安価で使いやすく、初心者にもおすすめです。
デジタルタイプは精度が高く見やすいというメリットがあります。
⑧ カルキ抜き(水質調整剤)
水道水にはアカハライモリにとって有害な塩素(カルキ)が含まれています。
水換えの際は必ずカルキ抜きを使用して塩素を中和してから使用してください。
液体タイプのカルキ抜きが最もポピュラーで、数滴〜数ml加えるだけで素早くカルキを除去できます。「テトラ コントラコロライン」などが定番商品として知られています。
これはアカハライモリ特有の体の構造に起因します。両生類は肺や口腔粘膜だけでなく、皮膚からも酸素や水分を取り込む「皮膚呼吸」を行っています(獣医師監修・エキゾチックアニマル情報サイト)。そのため、塩素は消化管だけでなく皮膚の細胞にも直接ダメージを与えるリスクがあり、魚類以上に水道水の影響を受けやすい生き物です。なお、カルキ抜き剤を使わずに塩素を除去したい場合は、日当たりの良い屋外でバケツに汲み置きする方法(晴天時で3〜6時間が目安)も有効です。
⑨ 陸地(流木・石・浮島)
アカハライモリは水中での生活が主体ですが、陸地に上がることも頻繁にあります。
完全な水中飼育でも生存は可能ですが、ストレス軽減と自然に近い行動観察のためにも、陸地を設けることを強くおすすめします。
陸地の作り方
流木を水槽内に立てかけて水面から出た部分を陸地代わりにする方法が最もシンプルです。
市販の「浮島」と呼ばれる水に浮かぶプラスチック製のプラットフォームも手軽に使えます。
石を積み重ねて陸地を作る方法は安定したレイアウトを作りやすいですが、石が崩れてアカハライモリが挟まれないよう、しっかりと固定する配慮が必要です。
⑩ シェルター(隠れ家)
アカハライモリは薄暗い場所に隠れることを好む生き物です。
シェルターがないと常にストレスにさらされた状態になりかねません。土管型の爬虫類用シェルター、流木の陰、石の隙間など、アカハライモリが身を隠せる場所を必ず用意してください。
アカハライモリの飼育セット:あると便利なオプションアイテム

冷却ファン・クーラー(夏場の必需品)
繰り返しになりますが、アカハライモリの高温への弱さは飼育上最大の注意点です。
エアコンを24時間稼働させて室温ごと管理できる環境であれば問題ありませんが、それが難しい場合は水槽用の冷却ファンまたは水槽用クーラーを導入することを強くおすすめします。
冷却ファンは2〜4℃程度の水温低下が期待でき、比較的安価です。
水槽用クーラーは確実に設定温度まで冷却できる信頼性の高いアイテムですが、価格は高めです。
夏を迎える前に準備しておくことが重要で、「暑くなってから買おう」では手遅れになる可能性があります。
ヒーター(冬場の補助的使用)
アカハライモリは冬になると代謝が落ち、冬眠に近い状態になります。
室内飼育であれば基本的にヒーターなしでも越冬できますが、15℃以下になるような寒い環境では弱ってしまうこともあります。
温度がある程度一定に保たれた室内(15℃以上)であればヒーターは不要ですが、寒い地域や冷え込む環境では低めの設定温度のヒーターを補助的に使用することも検討してみてください。
照明(ライト)
アカハライモリの飼育に照明は必須ではありませんが、水槽内の視認性を上げたいとき、または水草や苔(コケ)をレイアウトに取り入れたいときに役立ちます。
ただし、照明は水温を上昇させることがあるため、特に夏場はLEDライトを選ぶなど発熱の少ないものを選ぶか、点灯時間を短くするなどの工夫が必要です。
アカハライモリは強い光を好まないため、照明を使用する場合はシェルターやレイアウトで影になる場所を必ず作ってあげてください。
水草・コケ
水草を入れることで、水槽内の水質浄化効果が期待でき、アカハライモリの隠れ家にもなります。
ウィローモス、アナカリス(オオカナダモ)、マツモなどはアカハライモリとの相性が良く、初心者でも管理しやすい水草として定評があります。
アカハライモリが水草を食べることは基本的にありませんが、動き回る際に水草が抜けてしまうことがあるので、根をソイルや砂にしっかり植え込むか、重しを使って固定するのがコツです。
バックスクリーン
水槽の背面に貼るシートで、水槽内の見た目を整えるための装飾アイテムです。
青・黒・自然をテーマにしたデザインなど様々な種類があり、水槽全体の雰囲気をグッと高めてくれます。
飼育に直接関係するものではありませんが、インテリアとしての観点から取り入れると観察が一層楽しくなります。
アカハライモリの飼育を始めるための「水作り」手順

必要なものが揃ったら、いきなりアカハライモリを入れるのではなく、水槽の「水作り」を先に行うことが大切です。
水作りとは、フィルターや底砂にバクテリアを定着させて、アカハライモリが住める水質の安定した環境を整えるプロセスです。
まず底砂をよく洗い水槽に敷き、カルキ抜きした水を注入します。
次にフィルターを設置して稼働させ、そのまま1〜2週間程度空回しします。
この期間にバクテリアが底砂やフィルターのろ材に定着し、有害なアンモニアや亜硝酸を分解できる環境が整います。
市販のバクテリア剤(「テトラ バクテリア」「GEX サイクル」など)を使用すると、この立ち上げ期間を短縮できます。
アカハライモリの飼育セット購入で失敗しないためのポイント
最初から全部揃えようとしない
飼育グッズを見ていると「これも必要かも」と次々と商品が気になってしまいがちですが、初心者のうちはまず必須アイテムだけを揃えて飼育を開始することをおすすめします。
飼育を続けていく中で「水草を入れたい」「照明を使いたい」という気持ちが出てきたときに、少しずつ環境を充実させていくのが長続きのコツです。
セット販売商品を活用する
初心者が必要なものを個別に揃えるのが大変な場合は、水槽とフィルター、フタ、温度計などがセットになった「水槽セット」を活用するのも賢い選択肢です。
個別に揃えるより割安になることが多く、すべてのアイテムが同じメーカーで揃うため相性の問題が起きにくいというメリットがあります。
ただし、セット販売の製品は飼育ケースのサイズが小さめなことも多いため、飼育頭数と照らし合わせて確認してから購入することをおすすめします。
脱走対策だけは妥協しない
飼育セットの各アイテムの中で唯一、コストダウンや省略を絶対にしてはいけないのが「フタ」です。
アカハライモリの脱走は、飼育者が想像する以上に頻繁に起こります。「まあ大丈夫だろう」という油断が最も危険で、脱走後に発見が遅れると取り返しのつかない結果になりかねません。
フタの隙間が心配な場合は、目の細かいネットや薄いプラスチック板で隙間を塞ぐなど、細かい対策まで徹底してください。
飼育個体の入手は信頼できるルートで
飼育を始める際、生体の入手方法も重要なポイントです。国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは、アカハライモリは2020年の評価改定で「準絶滅危惧(Near Threatened)」に指定されており、IUCNは飼育目的の野生採集が個体数に影響を与えているとして、取引の抑制を呼びかけています。
飼育を始める際は、できるかぎりブリーダーやペットショップで繁殖された個体(CB個体)を選ぶことが、種の保全の観点からも推奨されます。
まとめ:アカハライモリの飼育セット、まず揃えるべきものはこれ!
この記事では、アカハライモリの飼育を始めるために必要なものを網羅的にご紹介しました。
最後に、初心者がまず揃えるべき「必須の飼育セット」を簡単に振り返っておきます。
- 飼育ケース(水槽):30〜45cm以上が使いやすい
- フタ(脱走防止):妥協厳禁
- 底砂:大磯砂や田砂など
- フィルター:スポンジフィルターや外掛けフィルターが初心者向け
- エアポンプ・エアチューブ・逆流防止弁(スポンジフィルターを使う場合)
- 水温計:常時確認できるよう設置
- カルキ抜き:水換えのたびに必須
- 陸地・シェルター:流木や石、浮島など
そして夏を迎える前に「冷却ファンまたはクーラー」を必ず準備しておくことが、アカハライモリを長期的に健康に飼育する上で最も重要なポイントです。
アカハライモリは手をかけすぎず、適切な水温と水質を維持してあげれば、とても長く一緒に暮らせる生き物です。
まずは基本の飼育セットをしっかり揃えて、素敵なアカハライモリライフをスタートしてみてください!

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